豊中市で初めての民間保育園として誕生した「あけぼの風の森保育園」は、0歳児〜2歳児約60名と職員約40名の乳児施設です。

都市型幼稚園・保育所の宿命的な園児達の騒音問題はハードとソフトの両面からの改善が必要です。

豊中市にある「あけぼの風の森保育園」では近隣に対して常日頃コミュニケーションを図っていたものの園児達の騒音問題は絶えず起こっていました。外周の塀がメッシュフェンスだったものを騒音問題解決の一助として、高さ2.5mの防音塀を設置致しました。

防音塀の施工前

着工前は写真のようにメッシュフェンスで園児達の声はストレートに近隣住宅へと飛んでいっておりました。

防音塀の設置後

「あけぼの風の森保育園」の防音塀は、高さ2.5mですが効果は大きく10db(デシベル)以上も下がりました。

着工に至るまでに近畿大学の西村教授の下で、岡山県工業技術センターでの素材毎に音の透過損失の実験を繰り返し行い、塀の素材を木製とポリカボネートのハイブリッド工法とする事を決定しました。全てを木製で施工すると圧迫感 があり近隣住宅との調和が取れないので、一部分をポリカボネートで明かり窓としました。近隣への環境を考慮した設計で、近隣からは高い評価をいただきました。

園の運営者の方々の声

今回、たくさんの方々の熱意とご尽力のおかげで「防音塀」が誕生しました。
当初は園関係者や保護者の方々から「塀で音が響かなくなるの?」「暗くならない?」等々、塀が出来ることで威圧感や閉塞感を感じるのではと心配する声も上がっていました。

しかし出来上がりを確認されると「いい塀ですね」「木の塀だから温かみを感じますね」と安心していただくことが出来ました。防音塀から漂うヒノキのほのかな香りと温もりで、園庭に安堵感とやすらぎを与えてくれていると感じております。そして防音塀の誕生をきっかけに、保育事業者と近隣の方々との共存の架け橋のひとつとなればと願っております。

「防音塀」の設置は、騒音を10dB以上さげることを目標とし、木材ベースとした塀にすることで街の景観を損なわずに木の吸音力で騒音を軽減しました。それだけでなく、園児達に良い影響を与えました。園児達は、木を触ったり、におったり、興味津々でヒノキの香りを感じていました。

作業工程

着工は、騒音測定から始めました。

まずは、A工区の既存塀の解体です。

既存土間コンクリートの斫りを行い掘削です。

狭い場所での掘削は、全て手掘り作業で行いました。

地中障害が多く難航しながらの掘削でした。配管やコンクリートの出っ張りなど苦戦の連続でした。配管だけでなく樹の根っ子も難敵でした。

D工区の既存ブロック塀解体は、近隣に配慮して音も振動も埃も出ないハンドクラッシャーで行いました。

中には境界杭が40㎝も地中に埋まっている事もありました。

土を掘り出すのに一苦労でした。

塀の高さが2.5mもありますので基礎の根入れ部分は充分に確保する必要があり、苦戦を強いられました。

狭い土地を有効利用するために柱を境界線ギリギリに建てるために、スマートガーデンが得意とする偏心基礎です。

防音フェンスは背が高いために、柱のかぶり厚さを考えると基礎寸法の中心に柱建てを行うのが一般的ですが、スマートガーデンでは自社開発の偏心基礎で境界線ギリギリに建てております
※柱のかぶり厚とは、鉄筋コンクリート造の建築物で、鉄筋を覆うコンクリートの厚さのことです。

いよいよ柱建てを行います。

柱の位置決めはレーザーで決めて行きます。

コンクリート打設には、バイブレータで密実に行いました。

A工区の柱建ては完了です。

C工区も同じ手順で行っています。

いよいよA工区の木板差し込みが始まります。

園児達が一番集まるA工区の完成です。

A工区の反対側からの完成写真です。

基礎の出来形です。

D・E・F・G工区の施工が始まります

こちらのD・E・F・G工区は道路に面するためにポリカボネートで、太陽の光を取り込みます。

木板は国産桧にACQ加圧注入したものです

D工区のポリカと木板の差し込みが終わりました

G工区も進んでおります

寸法切りした木板の端材はゴミとして処分するのではなく、あけぼの学園グループの7つの園で園児達の遊び道具として有効利用を図りました。捨てればゴミですが活かせば資源になります。

音の抜けを防止するためにゴムで隙間を詰めています

フェンス最下段は木板の腐食を避けるためにGLより6㎝上げております。

その隙間はゴムシートで音の抜けを防止しております。

こうして2ヶ月をかけて完成した「あけぼの風の森保育園防音工事」は国の検査を受けて合格しました。

騒音測定を行い大きな成果を確認できました

これで園児達が思い存分大きな声ではしゃぎ回れる「あけぼの風の森保育園」の園庭になりました。

2ヶ月の間、園児達や先生方にはご不便をおかけ致しましたが、国からも近隣からも先生方からも高い評価をいただきました「あけぼの風の森保育園防音塀工事」は、無事に完成致しました。